Last Updated 2021.01.01
自分史上最高のパワーを手に入れる
当サイトでは、脚の筋肉の役割と働き方から始まり、サドルポジションのセッティング、そして神経トレーニングによる正しいペダリングの練習方法を紹介してきました。
ペダリングトレーニングの最後は、自分史上最高のパワーを手に入れることができるハイパワーペダリングトレーニングです。
今までの記事を読んでいただき、様々なアプローチから正しいペダリングについて書いてきましたが、正しいペダリングが身についたら最後に本記事のハイパワーペダリングのトレーニングで大パワーを手に入れてください。
脚の筋肉の役割と働き方
このトレーニングをする前提として、正しいペダリング動作が体に染み付いていることが必要です。
まだ、ペダリングに自信がないという方は下記の記事を読んで正しいペダリングを身につける練習をしましょう。
脚の筋肉の役割と働き方を知り、正しい脚の筋肉の使い方をマスターする
自分のライディングに合った正しいサドルセッティング
サドルセッティングを見直して自分ライディングスタイルにあったサドルに調整して、ペダリングを効率よくするためのサドルセッティング
ペダリングの正しい動作を体に覚え込ませる神経構築トレーニング
正しいペダリング動作を体に覚え込ませる神経構築トレーニング
自分史上最高の力が欲しい
高負荷が必要なシーン、レースのスプリント、川沿いのサイクリングロードの向かい風峠、あらゆるシーンで自分史上最高の力を出すことができるハイパワーペダリング、キネティックチェーンについて紹介します。
例えばボールを数m投げるだけでいいならば、座ったままでも手首と肘の運動だけで十分投げることができるでしょう。しかし、100mも投げようとすれば、立って足を上げて体の捻って重心運動を使用して、全身の力を使ってボールに伝えないといけません。つまり、足から手のひらまで力を伝達させるわけです。この一連の動きをキネティック=運動連鎖といいます。
ロードバイクに置き換えると、ハンドルからペダルまでの筋肉の連鎖を理解して、関節の動きを連動させて、ペダルに自分のパワーの全てを伝えるということです。ママチャリでお買い物にでかけるだけならキネティックチェーンは必要ありません。しかし、ロードバイクで速く走るためには絶対に必要になるテクニックです。
ペダルは脚の筋肉と体重を乗せて踏みます。50の体重と100のパワーで踏めば、150の力で進むはずです。しかし、ペダルを踏む動作の反作用で、体は上に逃げようとします。体が上に30逃げてしまったとすると、120の力でしか進みません。その逃げを少なくすれば、消費エネルギーはそのままパワーになります。だから、キネティックチェーンがしっかりできているかどうかで出力がかなり変わってくるのです。
実際にキネティックチェーンを実践すると最高出力が2割も上がったという例もあります。
でも、実は出力が上がったのではなく、無駄になっている出力が減っただけなのです。
キネティックチェーンのメカニズム
ロードバイクにおけるキネティックチェーンのポイントは上半身の使い方です。ペダリングしながらまず背中を後ろから引っ張られているイメージで骨盤を立てます。骨盤を立てたまま、親指と人差し指以外の指、中指、薬指、小指の3本で、胸にボールを抱えるイメージでハンドルを持ち、そこからドロップ部分を内側に絞るように小指からギューッと握り込みます。そうすると広背筋に力が入りますね。その状態のまま、肘を曲げて上半身を引きつけます。広背筋を意識しながら、肩甲骨を下げつつ内側に寄せていくイメージです。肘を開かず、かといってハンドルよりも肘を内側に入れずに、肩とハンドルの距離を詰める感覚です。骨盤を立てようとする力と、ハンドルを引っ張ろうとする力が、綱引きしているイメージです。そうすると上半身の力がペダルに伝わり、いやでもペダルを大パワーで踏んでしまうはずです。これがキネティックチェーンによるハイパワーペダリングです。
何故これでパワーが出るようになるのでしょうか。
詳しく解説すると、人間の指を動かす神経は、2系統に分かれます。親指、人差し指の神経と、中指、薬指、小指の神経は違うのです。親指、人差し指の2本に力を入れると、上腕二頭筋と三角筋が一緒に動きやすくなり、肩が怒ったような形で力みが入ります。この状態では、肩から上のロックはできますが、肩から下のロックはできません。要するに骨盤が安定しにくくなり、出力が逃げてしまうのです。
中指、薬指、小指の3本で握ると、三角筋、僧帽筋上部線維に力が入りにくくなり、肩甲骨が自由になるのです。肩のロックが解除されると、菱形筋や広背筋を使ってハンドルを持ち上げるような力を出しやすくなるのです。ハンドルを持ち上げつつ、体幹を使って骨盤を起こそうとすると、脚を下に踏ん張るしかなくなります。すると出力が自然と下に抜けて、大きなパワーがペダルに叩きつけられるようになるというわけです。ハンドルから持ってきたパワーをペダルに逃がす、というイメージでパワーをかけられる。これがロードバイクにおけるキネティックチェーンです。
まさに切り札しかし習得は難しい
どのようなシチュエーションで有効なのでしょうか。
高負荷が必要な時だけ必要になります。普通に走っている時はニュートラルで問題ありません。
ずっとハンドルを握り込んでいたらゴールまで体力がもたないです。下半身だけじゃなくて全身を使って、ハンドルからペダルまで筋肉の運動を使って、自分の出力を最大に使うためのテクニックですから。だから、ロングライドには必要ありません。これはいざというときのブースターです。レースで付いていくため、アタックを決める時、ワンランク上のスピード域で走るためのテクニックです。ただ、使いこなすのはかなり難しいと思います。いきなりできるようにはならないでしょう。各部の筋肉と関節を意識して、何度も何度も繰り返して筋肉の連動を体に覚え込ませることが必要になります。でも、これができるようになればレースが楽しくなることでしょう。
ペダリングはロードバイク全ての起点です
ロードバイクに乗ることに少しづつ慣れてくると、もっと速く走りたいという焦りが間違った方向に進ませてしまうことがあります。しかしペダリングはロードバイクに乗る上で全ての起点となるので、ここを無視して通ることはできません。
ロードバイクの乗り方はその人が持つ骨格や筋バランス、癖によって様々です。理想のペダリングという1つのゴールに向かう時、アプローチの方法は1つだけとは限らないので時として遠回りしてしまうこともあると思います。正しいプロセスを最短コースで歩むには、まず自分の目標を明確に設定することが大切です。例えば車でどこかへ行くにはナビに目的地を設定しなければ進んで行くコースを選択することはできません。
そして、ペダリングとはどんな運動なのか正しく理解し、現状と目標とのギャップを理解することが大切です。ここで自分の何が違っているのかをしっかりと洗い出しましょう。自分の体がどんな状態なのかがわからないのに、修正を加えることはできません。自分には今何ができて何ができないのか。それはもしかするとスタート地点でゼロからやり直す必要があるかもしれません。しかし、間違ったペダリングのまま突き進めば、結局また元の地点まで戻りやり直さなければならないので、修正に要する時間はさらにふえてしまうことになります。
自分のペダリングと常に向き合ってください。一つ一つ目の前に課された課題をクリアしていくうちに時には迷ってしまうこともあると思います。何かおかしいけどその何かが自分では分からない時には、仲間との相互チェックも大きな助けとなります。ペダリングについては今まで雑誌やネット等の媒体であれこれ議論されているので、そこから得た知識もあるでしょう。そういった知識の中で作られてきた自分の思い込みがあれば、自分自身では間違いに気がつくことができません。その時、第三者の視点で客観的に見てもらうことが大切なのです。それでも行き詰まってしまうことがあれば、プロのフィッティングに任せましょう。
ペダリングに正解はない常に考え続けること
今まで脚の筋肉の役割の働き方から、サドルの位置によって使う筋肉を切り替える方法、そして正しいペダリングを体に覚え込ませるために神経構築トレーニングと本記事で計4度に渡りペダリングについて特集してきました。何度も言いますがペダリングに万人に当てはまる正解はありません。理想となるペダリングはありますが、それは皆さん日々脚の動きや筋肉の動きを意識してペダリングし続けることで習得できる一人ひとりの理想のペダリングです。これをやればOKというような内容ではなかったと思います。自分自身でペダリングとは何かを常に考え、最終回答を探し出す術になるような内容ばかりです。本記事を含めて自分にベストなアプローチを探し出すための参考書として、皆さん自身がそれぞれの目的にあった最終回答を見つけていただけたら幸いです。