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ワコーズの本気-摩擦と摩耗と潤滑剤の世界

Last Updated 2020.12.29

WAKOS(ワコーズ)の潤滑剤がおすすめな理由

ワコーズの本気-摩擦と摩耗と潤滑剤の世界
皆さんはロードバイク用のチェーンオイルや潤滑剤はどこのメーカーを使っているでしょうか。
多くの方は自転車用品店でみかけるフィニッシュラインの製品を使用しているかと思います。
私はオートバイに乗っていた経歴からWAKOS(ワコーズ)の製品を使用しています。
何故ワコーズの製品をロードバイクに使用しているかというと、オートバイに乗っていた経験からエンジンを高回転でブン回してもオイルがタレなかったり、チェーンオイルにおいてはいくら多めに塗布しても周りにオイルが飛び散らない等、実際にワコーズの製品を使用していて非常に信頼度が高かったためです。

結論からいうとワコーズの潤滑剤は非常におすすめということなのですが、何故ワコーズの潤滑剤がおすすめなのかということを実際の経験と製品ページから解説していきたいと思います。

ワコーズのおすすめ潤滑剤

ワコーズの製品は主に車やオートバイのオイルや潤滑剤といったものが多いのですが、潤滑剤やチェーンオイルについてはロードバイクに使用することにも想定されていて高負荷状態の時にも信頼できる潤滑性を発揮してくれます。ワコーズの製品の中からロードバイクに使用できる製品を紹介します。

CHL チェーンルブ

チェーンオイルで一番おすすめの製品がこのチェーンルブです。
フッ素樹脂を配合して、潤滑性・耐摩耗性・浸透性・付着性に優れていて長期間の潤滑効果を発揮します。風雨の中の走行や高速走行でもオイルが飛散しにくく、薄い被膜で砂や埃等も付着しにくい特性があります。水置換性があり水分が残っている状態のチェーンに塗布しても水と置き換わってオイルがチェーンに浸透してオイルを塗布したあとに時間を置くことなく使用できることもメリットがあります。

チェーンルブリキッド スピード・パワー

チェーンルブはスプレー式でしたが、こちらはリキッドタイプでチェーンの1コマ1コマに塗布していくタイプです。このチェーンルブリキッドは自転車専用品で、スピードとパワーのオイルを混ぜて塗布することでロードバイクに乗る場面に応じて好みの潤滑性能にすることができるようになっています。

チェーンリキッド パワー
厚くて強靭な皮膜を形成して、駆動系の振動を低減する効果があります。高トルクでも滑らかなフィーリングになります。力をかけた時にクッションのようなとても優しい印象を受けることができます。さらにチェーンから発する雑音も低減してとても静かな動きになります。
ルーラーやTT等一定のパワーで走り続けるシーンに向いています。

チェーンリキッド スピード
非常に薄く強靭な低抵抗の皮膜を形成して、駆動力をロスすることなくダイレクトに力を伝達します。軽くダイレクトなフィーリングでびっくりするくらいスムーズに回転します。
脚の回転を維持するのが楽になる印象受け、ノイズも低減します。
スプリンターやハイケイデンスで走るシーンに向いています。

ラスペネ

ラスペネは強力な浸透力と防錆性があるフッ素樹脂配合の浸透潤滑剤です。水置換性なので水に濡れた状態でも効果を発揮します。ディレーラーの可動部分やボルト部分に塗布することで防錆効果や高い潤滑性を発揮することができます。シフトのインナーケーブルやブレーキのインナーケーブルにも塗布することでスムーズなフィーリングにすることもできます。

ワコーズが考える潤滑と摩擦と摩耗

ワコーズは潤滑剤を開発する時に実際に色々な条件で実験をして理論だけでなく、実際の使用場面での耐久性や潤滑性のデータを取って製品を開発しています。
特に自転車の場合車やオートバイよりも潤滑剤の良し悪しで、パワーロスの割合が大きく左右されます。摩擦と摩耗の関係と摩擦と摩耗を減らすための潤滑剤の役割を理解してご自分のロードバイクのメンテナンスに役立ててください。

潤滑の目的とは

潤滑の目的とは2つの物体が接触する部分をスムーズに動かして、摩擦や摩耗を低減して部品の寿命を延ばす事です。
自転車のチェーンにおける潤滑の効果はどれくらいあるのでしょうか。
自転車という乗り物は、ペダルに入力したパワーの5%~10%は駆動部分のフリクションロスでロスしています。平均8%のロスをしているとすると、400Wでペダルにパワーを入力していると32Wは無駄にロスしていることになります。
チェーンに塗布する潤滑剤を摩擦係数の小さいものに変えると、そのパワーロスを半分くらいにできます。400W時のロスが8%から4%になると16Wのパワーをセーブすることができることになります。
これは理論値ではなくワコーズの実測値で、実際に自転車のクランクとリアホイールにパワーメーターを付けて、出力差を測って駆動ロスを計測しているそうです。

チェーンを綺麗にしてきちんと注油するほうが効果が高い

色んな技術者や開発者の方の話では、ベアリングをセラミックにするよりも、チェーンを綺麗にしていいオイルをきちんと注油するほうがよっぽど効果が高いそうです。
ワコーズの製品開発技術者も同じ意見で、車やオートバイに使用するエンジンオイルは使用している添加剤がどれも似通っているのでそれほど差が出ないのですが、自転車の場合車やオートバイに比べて潤滑剤の差がはるかに大きい差がでると言っています。

摩擦と摩耗について知る

摩擦と摩耗について知っていきましょう。
摩擦と摩耗のメカニズムについて。摩擦と摩耗は理論的に3種類に分類できます。

1つ目は接する物体の表面のデコボコが噛み合って、お互いの山を乗り越えることで起きるエネルギーロスが摩擦となるもの。これは弾性域での話なので、デコボコを乗り越える時に物体は変形しますが、そのあとで戻るため摩耗はしません。
まず、物体の表面は一見平らに見えていてもデコボコしているものだということを理解しないといけません。
チェーンにしろスプロケットにしろ、表面が平に見えていても必ずデコボコがあるということです。

2つ目は凝着摩耗というもので、2つの物質が接触したときに接触点に引力が働いて凝着して、それが引き離された時に凝着部がちぎれることで起きる摩耗です。
凝着がちぎれたときに摩耗粉が発生します。

※凝着とは:固体の内部にある原子は上下左右に隣り合う原子が存在しているのでエネルギーとして安定した状態にあります。しかし固体の表面にある原子は上方向に隣接する原子が無いので、結合すべきエネルギー(引力)を持っています。外部から他の原子が寄ってくると、その物質と固体表面の原子がお互いに引力を作用させて結合します。これを凝着といいます。

3つ目はアブレシブ摩耗です。簡単に言うと硬いものが柔らかいものを削ってしまう摩耗です。
摩擦面の材料の硬さに差がある場合、硬いほうの山が柔らかい面に食い込みます。この状態で滑り運動が起きると、柔らかい材料が溝を掘るように摩耗することになります。この時のエネルギーロスが摩擦となります。

摩擦が起きているところでは摩耗が発生する

1つ目のデコボコ面による摩擦で摩耗が起きないパターンはほとんど存在せず、多くは凝着摩耗とアブレシブ摩耗が起きていて摩擦があるところは必ず摩耗が発生すると言えます。
ロードバイクのチェーンやスプロケットで起きている摩耗は、メンテナンス次第ですが砂等の異物が入っていない状態だと凝着摩耗が多くなります。砂等の異物が入ってしまうとアブレシブ摩耗が多くなります。
頻繁にチェーンを綺麗にしている人は凝着摩耗が多く、あまりチェーンをメンテナンスしない人はアブレシブ摩耗が多くなるということになります。
チェーンを頻繁に綺麗にして、良いオイルをきちんと塗布しても凝着摩耗によって少しづつチェーンやスプロケットは摩耗によって削れていくことになります。

潤滑剤の役割とは

摩擦と摩耗について理解してきたところで、潤滑剤の役割について理解していきましょう。
2つの物体の摺動面(しゅうどう)における潤滑の状態について。物体の表面の潤滑剤はどんな状態で、どのようにして摩擦と摩耗を減らしているのでしょうか。
潤滑には3つの形態があります。

流体潤滑

流体潤滑とは、固体に付着した油膜(吸着分子膜)と固体に付着することなく固体間を流動的に動いている油膜(流体膜)が存在して、分厚い油膜が形成されている状態です。2つの摺動面は完全に離れていて、摩耗はしません。これが潤滑の理想形です。
潤滑剤の粘度が低かったり、荷重が大きくなったり、運動速度が小さくなった場合は油膜がだんだん薄くなっていき、最終的には流体膜がなくなって吸着分子膜のみになります。

境界潤滑

流体膜がなくなり固体に付着した油膜のみの潤滑状態が境界潤滑です。
さらに荷重が大きくなると固体に付着した油膜では支えきれずに固体同士が接触することもあります。

混合潤滑

混合潤滑とは、流体潤滑と境界潤滑が摺動面に混在している状態です。
一部分には十分な油膜があるけど、一部分では油膜切れを起こしている状態がこの状態になります。

ロードバイクのチェーンやスプロケットの潤滑状態

自転車のチェーンやスプロケットは摺動面の滑り速度が低く、しかも変速によりチェーンラインがズレて斜めになることもあるため、油膜が確保しにくい状態になります。
よって自転車のチェーンでは流体潤滑はほぼ起こらず、混合潤滑から境界潤滑になります。
チェーンとスプロケットの接触部分や、ヒルクライムやスプリント等高負荷下のチェーンの内部では、かなりの頻度で境界潤滑になっています。

チェーンとスプロケットは必ず摩耗する

ロードバイクのチェーンとスプロケットは、いかにいつも綺麗にメンテナンスして良い潤滑剤を使用していても、潤滑状態は混合潤滑か境界潤滑になるため必ず摩耗することになります。

自転車用の潤滑剤の正体は

自転車のチェーンオイルは主に鉱物油と化学合成油がメインです。
これは車やオートバイのエンジンオイルと同じです。
そこにメーカーによって違いますが添加剤を入れて調整しています。

添加剤の効果

チェーンオイルは鉱物油か化学合成油に添加剤を入れて調整しますが、添加剤の効果はどのようなものなのでしょうか。鉱物油と化学合成油単体では、使用条件によっては錆が発生したり大きな摩耗が起きたりします。
添加剤をオイルに配合することで、用途に合わせた性能をもたせることができます。
添加剤には汚れを定着させずに分散させるための清浄分散剤、オイルの酸化を防ぐ酸化防止剤、摩擦面に皮膜を作り摩耗を防ぐ摩耗防止剤、粘度を変える粘度指数向上剤、低温になっても固まることを防ぐ流動点降下剤、サビを防ぐ防錆剤、泡の発生を抑える消泡剤、摩擦係数を下げる摩擦調整剤、等多くの添加剤が使用されています。
多くはエンジンオイルに配合される添加剤で、自転車用チェーンオイルにこれら全ての添加剤が配合されているわけではなく、自転車のチェーンに適した添加剤が配合されています。

潤滑剤を適切に使用して少しでも摩耗を減らす

チェーンとスプロケットはどんなに綺麗にしても、良い潤滑剤を使用しても摩耗することは理解していただけたでしょうか。しかし、良い潤滑剤を使用することで少しでも摩擦係数を減らしパワーロスを減らす効果が大きいということもわかりました。

ロードバイクを効率よくパワーロスすることなく、速く走らせるためには私たちはチェーンやスプロケットを常に綺麗にするようにメンテナンスして適切に潤滑剤を塗布して少しでも摩擦によるパワーロスを減らす必要があるということです。

良い潤滑剤を使用する目的はチェーンやスプロケットの摩耗を防ぐのではなく、パワーロスを減らすということです。チェーンやスプロケットの摩耗を減らすのは日々チェーンやスプロケットに付着した砂や埃を綺麗に掃除してアブレシブ摩耗による摩耗を防ぐことです。
潤滑剤の役割と摩擦と摩耗を理解して、正しいチェーンやスプロケットのメンテンスをして楽しいロードバイクライフを送っていきましょう。

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