Last Updated 2017.06.15
世界のロードバイク界を牽引するジャイアント
出典:ジャイアント公式WEBサイト
2017年のジロ・デ・イタリアでチーム・サンウェブのトム・デュムランの活躍で益々注目されるのがサンウェブにロードバイク機材を供給しているジャイアント(GIANT)です。2016年はジャイアント・アルペシンとしてジャイアント自らUCIワールドチームを運営しジャイアントの名を世界に轟かせました。今では世界一の販売台数を誇る世界一の自転車総合メーカージャイアントの冠モデルであるTCRシリーズに焦点を当てて、TCRシリーズに見るジャイアントのロードバイクの真価に迫ります。
ジャイアントのTCRシリーズ
ジャイアントのロードバイクのラインナップで平地、上り、石畳のような走りにくい道でも高い走行性能を発揮できるように発表されたのがTCRシリーズです。初のTCRシリーズの発表は1997年。Team Compact Roadの略でトップチューブをなだらかに傾斜させたスローピングフレームをロードバイクに初めて取り入れたのがジャイアントのTCRシリーズです。当時はマウンテンバイクやアメリカンロードバイク人気の中、ジャイアントはマウンテンバイクの要素を取り入れて新しいロードバイクの形を提唱しました。
当時のロードバイクはトップチューブは地面と平行のホリゾンタル形状全盛。ジャイアントが発表したスローピングフレームのTCRシリーズは様々な賛否両論がありました。しかし、高剛性比と軽量化を両立し、ユーザーにとっても乗れる身長の幅が広くホリゾンタル形状のロードバイクよりも細かいサイズ展開をする必要がないということで、メーカーとユーザー双方にメリットがあるスローピング形状のフレームのロードバイクは徐々に世界標準として浸透していくことになります。
1997年のTCRシリーズの発表から19年経ち、2016年にTCRシリーズはモデルチェンジしさらに軽量化された現行のTCRシリーズとなっています。
現行TCRモデルのコンセプト
2016年にモデルチェンジしたTCRモデルシリーズのコンセプトはクライミングバイク。2012年までのTCRモデルよりフレームセット重量で181g、12%の軽量化を実現しました。フレーム成型においてカーボンプリプレグ(シート状のカーボン)の素材は変えずに、使用するカット枚数を従来使用していた量から減らすことで軽量化に成功しました。フレーム形状の設計を大きく変更し、トップチューブやシート集合部等を細身でスタイリッシュな形状に変更しました。
剛性を犠牲にしない開発ポリシー
フレームを軽量化したからといって剛性を犠牲にすることはありませんでした。BB部分やヘッドチューブ、ダウンチューブはボリュームを持たせることでライダーの力が入る部分は十分な剛性を確保しました。フレーム単体で800gを切るブランドがある中で、フレーム単体900g(2016年740mm/Mサイズ)、フォーク300gは飛び抜けて軽いわけではありません。ここに剛性を犠牲にしないジャイアントの開発ポリシーがあります。特にロードバイクのパフォーマンスに直結する剛性比重量では、ジャイアントは他ブランドのロードバイクを凌ぐデータを実証しており、軽量化を進めた新しいTCRモデルでもこの剛性比重量を開発の中心に据えてきました。
アドバンスドSLコンポジットテクノロジー
剛性比重量を実現する一つがアドバンスドSLコンポジットテクノロジーです。東レの最上級カーボン素材T-800グレードを使用して自社工場で一貫生産しています。トップライダーが求める軽さと剛性のベストバランスを可能にしたカーボンコンポジットフレームを生み出しました。
フレーム各部にもジャイアント独自のテクノロジー
フレーム各部にもジャイアントが誇る独自のテクノロジーが盛り込まれています。ヘッドチューブはステアリング剛性を高めるための大径ヘッドチューブの「OVERDRIVE 2」(TCR ADVANCED SL / TCR ADVANCED PROに採用)。ペダリングパワーを受け止めるオーバーサイズのボトムブラケットの「POWER CORE」。また、左右非対称のチェーンステイはドライブ側には剛性、非ドライブ側には安定性を提供しています。そして、四角断面形状のダウンチューブ「MEGADRIVE」はステアリング精度とペダリング剛性を飛躍的に高めることに成功しています。
他にも様々なテクノロジーが採用されていますが、これらのテクノロジーがジャイアントが目指す高い剛性比重量を支えています。また、現行TCRモデルでは、ヘッドチューブ、シート、ボトムブラケットの各集合部分のフレーム曲線を滑らかに再設計して、フレームの最適化をしています。
完成車としての完成度を高めるTCRモデル
ジャイアントは単にフレーム単体の剛性を高めるだけではありません。実際のライディングでは、フレームとフォークの剛性だけではなく、ホイールの剛性も考慮した上で剛性を最適化する必要があると考えています。そのため、実際に完成車にアッセンブルされるフレームとホイールをセットで剛性テストを繰り返して、ライダーが実際に感じる剛性を弾きだす研究をしています。
コンポーネントにも妥協しない
ジャイアントのロードバイクはコンポーネントにも妥協しません。最上位グレードのTCR ADVANCED SLにはシマノのデュラエースDi2をアッセンブルし、エントリーグレードのTCR ADVANCED 2でもシマノの105で統一しています。他社にあるようなコストダウンのためにシマノの下位グレードのパーツを使用したMIXコンポーネントにすることなく、完成車の時点でコンポーネントを統一してユーザーに高い満足度を与えています。ユーザーは完成車を購入した時点で既にアップグレードする必要なく高い走行性能を備えたロードバイクを手にすることができます。
2017年のジャイアントTCRモデル
夏ごろには2018年モデル発表されると思いますが、参考までに2017年のジャイアントのTCRモデルでお勧めのモデルをピックアップします。来シーズンにジャイアントのロードバイクを購入することを検討している方は参考にしてください。
TCR ADVANCED SL 1
サイズ:680(XS),710(S),740(M),770(ML)
重量:6.6kg(740mm)
フレーム:Advanced SL-Grade Composite,VARIANT ISP
フォーク:Advanced SL-Grade Composite,Full Composite OverDrive 2 Column
コンポーネント:SHIMANO DURA ACE
ホイール:GIANT SLR1 Carbon
価格:590,000円(税抜)
チーム・サンウェブのライダーが使用しているモデルです。コンポーネントは機械式のシマノの最新R9100系デュラエースです。ホイールはジャイアント独自のチューブレス対応のクリンチャーカーボンホイールが付属します。カーボンホイールも付属してこの価格は驚異です。
重量はMサイズで6.6kg。UCI公認のレースに出場するには6.8kg以上必要なので逆にバラストを付けないといけないくらい軽量です。これは最上級グレードのTCR ADVANCED SL 0がDi2を装着して6.8kgに調整するために、機械式のコンポーネントでは6.8kgを下回ってしまったのだと思います。完成車の時点でヒルクライムレースに出られるくらいの戦闘力を持っています。
TCR ADVANCED PRO 0
サイズ:425(XS),445(S),470(M),500(ML)mm
重量:6.8kg(470mm)
フレーム:Advanced-Grade Composite,VARIANT Composite Seat Pillar
フォーク:Pro-Spec,Advanced-Grade Composite,Full Composite OverDrive 2 Column
コンポーネント:SHIMANO ULTEGRA Di2
ホイール:GIANT SLR1 Carbon
価格:450,000円(税抜)
TCRモデルのミドルグレードでシマノのアルテグラDi2がアッセンブルされたモデルです。Di2コンポーネントとカーボンホイールも付属して45万円のお値打ちモデルです。フレームはAdvanced-Gradeの東レのT-700カーボンが使用されています。T-700カーボンも高強度のカーボンで他社ブランドでしたらこの完成車レベルだと60万円以上はするでしょう。この価格でカーボンホイールが付属してDi2のコンポーネントが使えるのはかなり魅力的だと思います。
TCR ADVANCED PRO 1
サイズ:425(XS),445(S),470(M),500(ML)mm
重量:6.9kg(470mm)
フレーム:Advanced-Grade Composite,VARIANT Composite Seat Pillar
フォーク:Pro-Spec,Advanced-Grade Composite,Full Composite OverDrive 2 Column
コンポーネント:SHIMANO ULTEGRA
ホイール:GIANT SLR1 Carbon
価格:330,000円(税抜)
フレーム・フォーク・ホイールはTCR ADVANCED PRO 0と全く一緒です。コンポーネントがシマノアルテグラ機械式になっているだけです。カーボンホイールだけで前後15万円ですのでコンポーネントのグループセットの価格を差し引くとフレーム価格は一体・・・という感じなコストパフォーマンスの高いモデルです。
TCR ADVANCED 1 KOM
サイズ:425(XS),445(S),470(M),500(ML)mm
サイズ:7.7kg(470mm)
フレーム:Advanced-Grade Composite,VARIANT Composite Seat Pillar
フォーク:Advanced-Grade Composite,Aluminum OverDrive Column
コンポーネント:SHIMANO ULTEGRA 11-32T
価格:240,000円(税抜)
ジャイアントのTCRモデルのエントリーグレードなのですが、コンポーネントがシマノのアルテグラで11-32Tのワイドレシオギアがアッセンブルされたヒルクライム仕様のモデルです。KOMはKing of Mountainの略です。フレームのカーボン素材はTCR ADVANCED PRO 0 / TCR ADVANCED PRO 1と同じ東レのT-700グレードが使用されています。エントリーグレードながらもアルテグラのコンポーネントでワイドレシオギア仕様は、初心者にはかなり使いやすく豪華ながらもコストパフォーマンスが高いモデルだと思います。ブルベや長距離ツーリング等ある程度ヒルクライムする場面も想定する目的がある方ならお勧めです。
TCR ADVANCED 2
サイズ:425(XS),445(S),470(M),500(ML)mm
重量:7.9kg(470mm)
フレーム:Advanced-Grade Composite,VARIANT Composite Seat Pillar
フォーク:Advanced-Grade Composite,Aluminum OverDrive Column
コンポーネント:SHIMANO 105
価格:190,000円(税抜)
ロードバイク初心者で予算を抑えつつカーボンロードに乗りたい全ての方にお勧めしたのが、このTCR ADVANCED 2です。20万円を切る価格でコンポーネントが105で統一されていて、フレームも東レのT-700が使用されているのは驚異的なコストパフォーマンスです。このレベルの完成車ならヨーロッパブランドだと軽く30万円くらいはします。コンポーネントも105なのでアップグレードもできますし、ホイールを変えればレースにも出られるレベルの戦闘力を持っています。まずはカーボンのロードバイクとはどういったものなのか体験してみたい方にはお勧めのモデルです。エントリーグレードといってもカーボン素材の剛性は十分ですので、自身がレベルアップしてもフレーム自体は買い換える必要が無いというのは魅力的です。
2018年のモデルを占う
ジャイアントの2018年のTCRモデルは、2016年モデルで限定販売されたTCR ADVANCED SLのチーム限定カラーモデルが発売されるかどうかでしょう。2016年のTCR ADVANCED SL TEAMは最上級グレードのフレームにホイールも付属、コンポーネントはシマノのデュラエースでジャイアント・アルペシンのチームカラーで59万円と破格でした。国内限定50台とかなりのプレミアバイクでした。
2018年モデルでチーム・サンウェブ仕様のTCR ADVANCED SL TEAMが販売されたらかなり注目されそうです。
新型アルテグラが投入されるかどうかに注目
先日海外でシマノのアルテグラモデルの新モデルR8000系の写真と思われる画像が、SNSを通じてリークされましたが、今年シマノが本当にアルテグラの新モデルを発表するかが注目されます。そして2018年のジャイアントのTCRモデルに新型アルテグラコンポーネントがアッセンブルされるかどうかに注目です。これからロードバイクを購入しようと検討している方はシマノが新アルテグラを発表するかどうかを見届けてから購入を決めてもいいかもしれません。もし今年シマノが新アルテグラを発表したら、少し予算オーバーしても新アルテグラがアッセンブルされたモデルのロードバイクを購入するのがお勧めです。
2017年6月8日にシマノは正式に新型アルテグラR8000シリーズを発表しました。
発売は2017年6月下旬からとの事ですので、2018年モデルに新型アルテグラR8000が搭載されるのが期待されます。
ジャイアントはコストパフォーマンスだけではなく、ジャイアントのロードバイクを制作する姿勢や情熱について理解して頂けたらと思い色々と調べて記事にしました。ジャイアントのロードバイクの魅力は伝わったでしょうか。これからロードバイクを購入しようと考えている方やジロ・デ・イタリアを観てジャイアントのロードバイクに興味が沸いたという方は参考にしてみてください。