Last Updated 2020.12.24
今注目のミドルグレードのロードバイク
完成車で30万円を超えるクラスのロードバイクになると、乗り出し時のクオリティも高く、パッケージとしての完成度も高くなります。メインのコンポーネントもシマノの105・アルテグラが付くので、基本的には不満のないものが手に入ります。
購入者のロードバイクでこんなことをしてみていという欲求を、ロードバイクの性能が足を引っ張ることはほとんどありません。でも、完成しきっているわけではないので、あとからカスタムアップして自分好みに仕上げる余地も残されています。一つ下の価格帯になると、フレームが良くてもコンポやパーツがかなり粗っぽくなってしまう傾向があります。
ミドルグレードならでは美点
メーカーによって違いはありますが、ハイエンドモデルは尖った味付けがされており、クセがあって扱いづらいものも多々あります。対してミドルグレードの完成車は万能で扱いやすく仕上げられているモデルが多いです。尖っていないからこそ、あとからホイールを換える等して自分の走りの好みに持っていきやすいです。これはミドルグレードならではのメリットです。
ミドルグレードのフレーム
ミドルグレードのフレームは肉厚も確保されているので、ハイエンドフレームに比べると多少は衝撃に強くなっています。そういう点も含めて、現在のミドルグレードはユーザーの使い方に合っているモデルが増えてきていると思います。中には、軽くてソリッドでカンカンに反応するトップモデルより、じっくり踏めてグイグイ力をかけられるミドルグレードの方が脚に合うという人もいます。
ミドルグレードは今が買い時
予算に余裕があったとしても、あえてミドルグレードを買うという選択肢もあります。
ミドルグレードはメーカー間の競走が激しく、ユーザーのシビアな要求にさらされる価格帯です。しかも今はミドルグレードの完成度がその上下の価格帯の売上も左右する時代です。ミドルグレードの完成車のデザイン、雰囲気、クオリテイ、インプレの評価などを見て、もっと出せる人は30万円台でこんなにいいのだからハイエンドは間違いないはずと判断しますし、ミドルグレードに魅力を感じたエントリー層は、予算にあったエントリーモデルに着地します。コマーシャル効果の高い価格帯がミドルグレードであり、そこでそっぽ向かれたら上下のラインナップがダダダッと崩れる可能性が高いです。そういう事情もあってミドルグレードに力を入れているメーカーは間違いなく多いです。だから、今はこの価格帯が最もコストパフォーマンスが高い=良いものが安く買えるのです。
ミドルグレードで見るポイント
今のミドルグレードにはあらゆるジャンルのモデルがあります。コンペティションロード、コンフォートロード、メーカーによってはエアロロードまで選べます。最近はディスクロードの完成車まであります。しかも全ジャンル粒ぞろいです。選り取りみどりです。
ミドルグレードの完成車でまず見るポイントはフレームです。フレームは最も換えのきかない部分なのでフレームの良し悪しを重要視します。コンポやホイール等スペックを気にされる方も多いと思いますが、良いホイールが入っているから等という選び方では幸せにはなれません。フレームとフォークにどれだけコストをかけているかが大事です。スプロケット、チェーン、ブレーキ、クランクがコストダウンの対象になりやすいですが、このパーツがしょぼい、こんなところでコストダウンしている、アルテグラが付いていない、と欠点を探すのではなく、フレームとフォークにどれだけ力が入っているかというところに注目したほうがいいでしょう。
フレームとフォークにコストをかけているメーカーほど、価格の帳尻を合わせるためにパーツでコストダウンしていることが多いのです。
パーツでコストダウンするのには理由があった
悪印象になりやすいパーツでのコストダウン。しかしそれには理由がありました。だからパーツのグレードが低くても、サードパーティ製のパーツが入っていても、ダメな完成車とは言い切れません。フレームとフォークにコストをかけていいものを作り、競合他社に合わせるために泣く泣くパーツで妥協しているというケースも多いからです。だから、カタログスペックにとらわれてはいけません。フレームとフォークにどれだけコストを割いているのかを判断するのは難しいという人は、プロショップに相談するのがおすすめです。
ブレーキやクランクでコストダウンしているとイメージは悪いけど、それにはきちんとした理由があって、良いところが他にあるのです。実はそういうモデルこそがおいしかったりするものです。
ハイエンドとミドルグレードの違い
ミドルグレードはハイエンドモデルよりフレーム素材(カーボン)のグレードを下げているため、剛性が低く重量が増していることが大半です。しかし、それが扱いやすさや耐久性の高さといったメリットになっていることも多いです。上位グレードと同じフレーム形状のミドルグレードもありますが、メーカーによっては独自設計のものもあります。
フォークもしっかりと作ってあるかチェック
フロントフォークで手抜きしているメーカーもないではないですが、それほど多くありません。30万円台になるとしっかりと作ってあるモデルが多いです。中にはミドルグレードとハイエンドモデルでフォークを共有しているモデルもあります。
コンポーネントに注目
搭載されるコンポーネントはシマノの105かアルテグラがメインになります。以前より上位グレードのデュラエースより性能差は縮まっていますし、変速段数もデュラエースと同じ11速。アルテグラ完成車でもスプロケットは105というケースもありますが、それほど性能差はありません。
パーツのコストダウンは悪い事ばかりではない
ブレーキ、クランク、チェーン等にシマノ無印パーツやサードパーティ製の製品を使ってスペックダウンしているモデルもありますが、パーツでコストを下げているモデルほどフレームとフォークにコストを割いている傾向にあります。パーツでコストダウンしているからと候補から外すのはもったいないです。
2017年ミドルグレードのロードバイク
30万円台のミドルグレードの完成車をピックアップします。
20万円以下のエントリーグレードと比べると明らかに違いがわかると思います。
GIANT TCR ADVANCED PRO 1
2016年にフルモデルチェンジしたジャイアントのレーシングモデルTCRのセカンドグレードです。メインコンポーネントはシマノのアルテグラ(チェーンはKMC)、ホイールはジャイアントのカーボンクリンチャーSLR1というそのままでもレースに出られるスペックながら、価格は33万円に抑えられています。
GIANT TCR ADVANCED PRO 1
フレーム:アドバンスドグレードコンポジット
フォーク:アドバンスドグレードコンポジット
コンポーネント:シマノアルテグラ
ホイール:ジャイアント SLR1カーボンクリンチャー
タイヤ:GIANT GAVIA SL 700x25C TUBELESS READY
サドル:GIANT CONTACT SL FORWARD
重量:6.9kg(470mm)
価格:33万円(税抜き)
PINARELLO GAN S
2016年登場のGANシリーズの次男GAN Sです。フラットバック形状やオンダF8フォーク等の形状はフラッグシップドグマF8に酷似していますが、別設計になっています。メインコンポーネントはシマノの105とアルテグラが用意されています。ブレーキやクランクは105の場合はシマノのグレード外製品がアッセンブルされます。
PINARELLO GAN S
フレーム:HighStrength Carbon T700 12K
フォーク:ONDA F8 T700 1″1/8-11/2 インテグラル/アシンメトリック
コンポーネント:シマノ105 or アルテグラ
ホイール:シマノ RS010
サドル:フィジーク・アリアンテ R7
重量:8.06kg(46.5SL)
価格:37万円(シマノ105 税抜き)
WILIER TRIESTINA GTR-SL
ウィリエールの定番のエンデュランスモデルです。GTRの金型を用いてカーボン素材のグレードを上げて、キレのある走りを目指したモデルです。フレーム販売に加えて3種類の完成車が設定されています。イタリアらしいカラーリングも魅力です。
WILIER TRIESTINA GTR-SL
フレーム:60T/46Tカーボン(メカニカル/Di2兼用)
フォーク:カーボン
コンポーネント:シマノ105 or アルテグラ or デュラエースMIX
ホイール:シマノ WH-RS010 or WH-RS11
重量:8.06kg(Sサイズ)
価格:34万円(シマノ105 税抜き)
MERIDA SCULTURA 6000
モデルチェンジしたばかりの万能モデルである、スクルトゥーラのセカンドグレードです。フレームはプロチームに供給されているものと同じです。プロユースフレームをアルテグラでまとめたお買い得完成車として注目を集めています。
MERIDA SCULTURA 6000
フレーム:Scultura CF2 [PF86]
フォーク:Road carbon Race
コンポーネント:シマノアルテグラ
ホイール:Fulcrum Racing Expert
タイヤ:Continental Grand Sport Race 25 fold
サドル:Prologo Kappa 3
重量:7.9kg(50cmサイズ)
価格:29.9万円(税抜き)
TREK EMONDA SL6
トレックの最軽量モデルのEMONDAのセカンドグレードモデルです。基本設計はトップモデルのエモンダSLRと同じですが、フレーム素材はOCLV500カーボンとなっています。メインコンポーネントにはシマノアルテグラが採用されていてホイールにはボントレガーのチューブレスモデルがアッセンブルされています。
TREK EMONDA SL6
フレーム:Ultralight 500 Series OCLV Carbon, ride-tuned performance tube optimization, E2 tapered head tube, BB90, internal cable routing, DuoTrap S compatible, Ride Tuned seatmast
フォーク:Emonda full carbon, carbon E2 tapered steerer
コンポーネント:シマノアルテグラ
ホイール:Bontrager Race Tubeless Ready
タイヤ:Bontrager R2 Hard-Case Lite, aramid bead, 700x25c
サドル:Bontrager Montrose Comp
重量:7.43kg(56cmサイズ)
価格:33.9万円(税抜き)
現在のミドルグレードロードバイクの総括
昔のミドルグレードのロードバイクには個性が無かったと言われましたが、カーボンフレームの成熟度が上がってミドルグレードでも個性が出せるようになってきたと言えるのかもしれません。ミドルグレードにはハイエンドとは違った楽しさがあります。ハイエンドじゃないと楽しめないというのは昔の話です。
ハイエンドは買えないからというネガティブなマインドでミドルグレードを選ぶ必要はありません。
現在のミドルグレードは性能的に相当高いレベルにあります。ハイエンドにかなり近づいています。相当いいものを手にしていると思っていいと思います。
ミドルグレードとハイエンドの価格差は4倍~5倍ですが、性能差はそんなにありません。人間は上が見えているとどうしても背伸びをしたくなってしまう生き物ですが、今のミドルグレードにそんな必要はありません。今のミドルグレードのロードバイクは自動車で例えるなら3000万円クラスのスポーツカーに乗っているようなものです。自転車界のフェラーリに乗っているんだ、そういう感覚で乗って欲しいと思います。
今はミドルグレードのために、ハイエンドの設計思想を受け継ぎつつも独自設計して、同じ金型を使いまわすようなことはしていません。ミドルグレード用に再設計された立派な地位を確立しています。エントリーグレードからステップアップする方も、ハイエンドの決戦用を持っていて普段練習用としてもう一台欲しいという方もミドルグレードの特徴を良く理解してミドルグレードの良さを理解して、ぜひミドルグレードのロードバイクを手にいれてください。
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