Last Updated 2020.12.25
10万円台のカーボンクリンチャーホイールは使えるのか
カーボンホイールというとレース志向の方の決戦用ホイールとして、ちょっと前までは30万円~50万円という超高額なホイールばかりでしたが、2017年になって完成車に付属でアッセンブルされる等、決戦用ではなく日常的な使用に耐えられる耐久性と技術の進歩による低価格化でとうとう10万円台のカーボンホイールまで出てくるようになりました。そんな低価格化による10万円台のカーボンクリンチャーホイールは果たして本当に使えるホイールなのか。注目のモデルをピックアップします。
サクラサイクリング 38mm フルカーボンホイール
シマノのホイールの設計をしていたエンジニア達が立ち上げた日本のロードバイクパーツメーカーがサクラサイクリングです。サクラサイクリングは12万円~13万円台という低価格カーボンホイールをリリースして注目を集めています。リムハイト50mmと38mmにそれぞれチューブラーとクリンチャーのモデルが用意されますが、これは38mmハイトのクリンチャーモデルです。コンセプトはエアロ特化です。リム形状に拘り大手メーカーに負けない扱いやすさと空力性能を実現しました。それなりの重量があるので軽快感に富むタイプではありませんがバランスが良いのが特徴です。カーボンクリンチャーらしい力強さがあり、パワフルに進みます。空力性能、巡航性能、高速域の加速性能は価格以上の性能があります。剛性の高いワイドリムの特性が生きたホイールで、強い転がり感がありながらも滑らかに進みます。リムハイトとスポーク数のわりに空力が良いので、転がりの強さとパワフルな高速巡航ができます。価格を考えると驚きの性能を持っているホイールです。
サクラサイクリング 38mm フルカーボンホイール
実測重量:フロント704g、リア885g(クイックなし、シマノフリー)
スポーク:フロント20本、リア24本
リム高:38mm
リム幅:25mm
価格:134,000円
フルクラム レーシングクアトロ カーボン
スピード40Cとほぼ同じリム形状と同じスポークパターンにしながらも、ハブをアルミにして価格15万円台を実現したモデルです。スピード40Cのリムは3Kフィニッシュ、クアトロカーボンはUDフィニッシュですが、これが重量や剛性に差をつけるためなのか、表層のみなのかは公表されていません。カーボンらしからぬダイレクト感があり、ペダルへの入力と同時に反応する俊敏性はスピード40Cと遜色のないレベルにあります。乗り心地の面で多少のザラつき感があるものの、跳ねてタイヤの接地感が希薄になるようなものではありません。平地の高速域からのダッシュやペースアップの反応が良く、リム部分の慣性が生きて強い転がりを生み出しています。高密度の硬いリムで組まれたソリッド感の強いホイールになっています。ダイレクトなペダリングフィールがあり、ペダリングパワーが瞬時に推進力に変わるレスポンスの良さがあります。高負荷・高速域の加速はクアトロカーボンの方がスピード40Cより力強さを感じます。上りの走りも十分軽快さがあるので、オールラウンドな速さを持っています。
フルクラム レーシングクアトロ カーボン
実測重量:フロント665g、リア833g(クイックなし、シマノフリー)
スポーク:フロント18本、リア21本
リム高:40mm
リム幅:24.2mm
価格:153,000円
ジャイアント SLR1ホイールシステム
世界有数の自転車総合メーカージャイアントがリリースするオリジナルのカーボンクリンチャーホイールです。ダイナミック・バランス・レーシングというジャイアント独自のスポークパターンが特徴のカーボンクリンチャーホイールです。基本的なスポークパターンは2:1なのですが、フリー側のスポーク位置、長さ、太さ、テンションが前後で非対称になっており、駆動力がかかった時にスポークテンションが均一になるように組まれています。見た目は地味ですが、後輪のスポークパターンを見るととても凝った設計で驚かされます。SLR0と比べると価格差なりの性能差があるように思いますが、それでもこの素直さとバランス感は素晴らしいものです。この価格帯のホイールには珍しい上質さのある走りが特徴で、どこまでも気持ちよく走ることができます。個性的ではありませんが、常用ホイールとして使うならかなり良い仕事をしてくれるはずです。制動性能もさほど悪くありません。ホイール剛性は高くないもののバランスが良いので、踏み味に対してはパワーロスがある感覚は少なく、ふわりと軽い質感で滑らかに転がってくれます。平地の高速ライドよりもアップダウンのあるコース向きで、ケイデンス重視で一定ペースで刻むとスーッと軽く駆け上がります。
ジャイアント SLR1ホイールシステム
実測重量:フロント645g、リア811g(クイックなし、シマノフリー)
スポーク:フロント16本、リア21本
リム高:30mm
リム幅:23mm
価格:フロント70,000円、リア80,000円
イメージ プロジェクト167CM
2016年日本に誕生したパーツブランドです。価格が11万円台という驚きの激安カーボンクリンチャーホイールです。有名ブランドのリム製造を行う大手リムメーカー、台湾のギガンテックス社のWH-167リムと、サーカスモンキー社のハブを使用しています。リムは耐熱性に優れた樹脂を使って頑丈に作られており、レースはもちろん毎日のトレーニングにも耐えるように設計されています。今後、より高性能なハブを用いた上位モデルを展開する予定との事です。重量がかさむので勾配のきつい上りは得意ではありませんが、前輪に動きの軽さがあるせいかダンシングをしてスピードで押し切れるような上りは、スペックの割に軽く進んでくれます。平地はリムハイトの高さと慣性の大きさを活かして、脚を温存しながら高速を維持できます。ざらついたブレーキタッチなど総合的な性能は一世代前ですが、この価格でカーボンクリンチャーホイールを手にできると考えれば十分に価値のあるものです。
イメージ プロジェクト167CM
実測重量:フロント801g、リア984g(クイックなし、シマノフリー)
スポーク:フロント20本、リア24本
リム高:55mm
リム幅:23.5mm
価格:119,000円
エントリーグレードはアルミハイエンドと比較する
エントリーグレードのカーボンクリンチャーホイールは重量面や価格面でアルミホイールのハイエンドモデルとの比較になります。決戦用としては重量面でミドルグレードのカーボンクリンチャーよりも明らかに重たいため、比較対象としてはアルミホイールのハイエンドモデルになります。ご自分の使用目的がレースで、予算面ではアルミホイールのハイエンドモデルを選択するのも選択肢の一つになります。しかし、常用としてカーボンホイールを使用してアルミホイールよりも乗り心地や性能を重視したいとなるとエントリーグレードのカーボンクリンチャーホイールが視野に入ってきます。エントリーグレードのカーボンクリンチャーはそういった事も考えられているのか、普段の使用でも耐えられる耐久性と剛性のバランスのとれたモデルが多く、普段からカーボンホイールのフィーリングに慣れておきたいというユーザーであればエントリーグレードのカーボンホイールはその期待に応えてくれると思います。