Last Updated 2020.12.25
駆動系の消耗交換時期を考える
以前消耗品の交換時期を見極めるとして、ワイヤー類とタイヤの交換時期について解説しました。ロードバイクで消耗する部品はワイヤー類やタイヤの他にチェーンやスプロケットといった駆動系も消耗品です。特にチェーンは常に力が加わる部品のため交換サイクルが短く、傷んだチェーンでロードバイクに乗り続けているとスプロケットや他の駆動部品まで無駄に消耗してしまいます。ブルベや長距離サイクリングする人に限らず、ロードバイクに乗っている方は駆動系の消耗に注目して適切な交換サイクルで駆動系をリフレッシュして楽しくロードバイクに乗れるように常に気を配っていきたいところです。
チェーンの消耗・交換時期の判断基準
駆動力を伝達しているチェーンは、乗っているうちに伸びてしまいます。伸びるといってもプレートが伸びるわけではなく、ピンとリンクが摩耗した結果、チェーンの全長が長くなってしまいます。しかし、コンポーネントメーカーは交換時期の明確な指標を公表していません。私達ユーザーが判断しなければいけません。
メーカーや走り方によっても変わりますが、チェーンの交換サイクルは3000km~6000kmあたりが適当でしょう。でも、チェーンは早めに交換することをおすすめします。チェーンが伸びると変速性能が低下する上に、伸びたチェーンで走っているとチェーンリングとスプロケットの摩耗が早まってしまうためです。チェーンが伸びても走れますが、チェーンより高価なスプロケットやチェーンリングがダメになってしまうのです。早めにチェーンを交換した方が結果としてチェーンリングとスプロケットが長持ちするので、安上がりになるのです。チェーンの伸びについてはチェーンチェッカーを使うことでチェーンの伸びをチェックすることができます。チェーンはチェーンチェッカーで0.5%以上伸びていたら交換時期です。
チェーンの交換時期
チェーン
交換の目安:3,000km~6,000km
チェーンを交換する目安としては3000km~6000kmが目安です。チェーンチェッカーを持っているなら、チェーンの伸びが0.5%以上伸びていたら交換時期が近いです。0.75%の伸びなら交換を推奨、1%になったら即交換が必要です。チェーンを繋ぐのにコネクトリンクを使っている人も多いですが、基本的には1回の使い切りです。チェーンを交換してもコネクトリンクを使いまわしている人はたくさんいますが、コネクトリンクも消耗品です。使い回しはしないようにしましょう。
スプロケットの交換時期
スプロケット
交換の目安:15,000km
チェーンリング同様に、チェーンによってトルクがかかるスプロケットも消耗品です。枚数が多くなる分負荷が分散されて長持ちするのでは、と考えるのは早計です。歯数が少ないためチェーンからの負荷が大きく摩耗が激しいのです。スプロケットが摩耗した時に出る症状は、チェーンリングと同じで歯飛びが発生します。寿命は15,000kmくらいでしょう。使うギアが偏っている人、ヒルクライムをよくする、同じギアでスタートダッシュを繰り返すような人は摩耗が同じ歯に集中するため、交換スパンがもっと早くなる時もあります。トップグレードのスプロケットはロー側が一部チタンになっているものがありますが、スチールの方が摩耗には強い傾向にあります。アルミのサードパーティ製の軽量スプロケットは完全に消耗品です。寿命は2,000km程度です。
チェーンリングの交換時期
チェーンリング
交換の目安:10,000km~20,000km
チェーンにトルクを伝えるチェーンリングは、チェーンとの接触部分である歯が摩耗します。チェーンリングの摩耗はメーカーや走り方、ケイデンスや負荷等によっても変わるため、交換時期の目安を出すのはなかなか難しいところです。チェーンのコンディションによっても大きく変わります。伸びたチェーンで走る人やチェーンのメンテを疎かにしている人は、チェーンリングとスプロケットが減りやすくなります。また、雨の中でも乗る人や高負荷でアウターをガンガン使う人も摩耗が早まります。それを踏まえてざっくり言うなら、チェーンリングの寿命は1万km以上2万km以下でしょう。トルクをかけた時にチェーンが歯飛びするようなら寿命はとっくに過ぎてしまっています。年に1回は歯の摩耗をチェックするようにしましょう。
アウターとインナーのどちらをよく使うのかによっても話は変わってきます。常用速度域が高くレースをやる人は、アウターの使用頻度が高くなり、アウターが摩耗しやすくなります。速度域が低かったりヒルクライムをメインにやる人は、インナーの使用頻度が高くなり、インナーの方が早く減りやすいです。
インナーはアウターに比べて歯が高いので、減っても歯飛びが起きにくいです。アウターの歯飛びのような症状が出にくいので難しいところですが、歯が削れて形状が大きく変わったら交換時期になります。
フロントディレーラーの交換時期
フロントディレーラー
交換の目安:プレートが変形したら
意外に思われるかもしれませんが、フロントディレーラーも消耗品として考えるべきパーツです。変速時に大きな力がかかるためです。アウターで踏んだままフロントを変速してチェーンをインナーに落とそうとすると、チェーンにテンションがかかった状態、チェーンがアウターから外れにくい状態のままフロントディレーラーがチェーンを押すので、フロントディレーラーのプレートに大きな力がかかって、曲がってしまうことがあるのです。特にモーターの大パワーで押す電動コンポーネントは要注意です。変速する時に一瞬トルクを抜けばいいのですが、最近は踏み込んだまま変速する人が多いのです。変速がおかしくなったら、フロントディレーラーをチェックしてみてください。フロントディレーラーを真上から見て、プレートが曲がっているようなら交換が必要です。トップグレードは堅牢に作ってありますが、ミドルグレードのフロントディレーラーは曲がってしまうことがあるようです。
プーリーの交換時期
リアディレーラーのプーリー
交換の目安:10,000km
リアディレーラーのプーリーも消耗品です。トルクがかかるところではありませんが、歯は摩耗しますし、ベアリングも傷みます。交換の目安は10,000kmくらいでしょう。メーカーによってはプーリー自体が割れてしまうこともあります。メンテナンス時にチェックしてみてください。
コンポーネントメーカーの純正プーリーは樹脂製、サードパーティ製のプーリーは金属製であることが多いですが、いずれもメンテナンスをしていれば歯の摩耗はさほど激しくはありません。とはいえ、樹脂も金属も摩耗します。歯の形状をチェックして、大きく減っていたら交換が必要です。また、プーリーのベアリングにも注意が必要です。ブッシュタイプもボールベアリングタイプも定期的にベアリングの状態をチェックして、回転が悪くなってきたらメンテナンス、交換をしましょう。
リアディレーラーエンドの交換時期
リアディレーラーエンド
交換の目安:1年に1回
フレームとリアディレーラーを繋ぐ小さなエンド金具。これが交換可能になっているリプレイサブルエンドは、落車でロードバイクが右側に倒れても、フレームまで衝撃が伝わらないように曲がりやすく作られています。一種のブレーカーとして機能します。実はこのリプレイサブルエンドも消耗品です。あえて強度を落として作られているため、落車していなくても変速のショック等で徐々に曲がってしまうこともあるのです。
エンドが曲がったまま走行していると、ロー側に変速した時にリアディレーラーがリアホイールのスポークに接触し、最悪の場合はスポークによって巻き込まれたディレーラーがシートステーに激突するという大惨事になることもあります。フレーム、ホイール、ディレーラー、全てにダメージを与えてしまいます。落車していなくてもエンドは1年に1回は交換するのがおすすめです。
リアディレーラーエンドを新品に交換したらそれでOKというわけではなく、精度が出ていないので、新品のエンドに付け替えたら必ずエンド修正をしなければいけません。
ベアリングの交換時期
ベアリング
交換の目安:ボトムブラケットは1年に1回 ハブベアリングは5,000km~10,000km
ボトムブラケットは1年に1回、ホイールのハブベアリングは5,000km~10,000kmに1回はチェックしましょう。いずれも回転がゴリゴリになっていたらショップで診断してもらい交換してもらうようにしましょう。シマノホイールのカップアンドコーンのハブベアリングはレースが傷んでしまうと交換にコストがかかるので、こまめにベアリングの状態をチェックしたほうがいいでしょう。
その他の消耗部品
駆動系の他にもロードバイクのパーツで消耗品のパーツはまだあります。ステムやハンドル、ブラケットフードやバーテープなども消耗品です。これらも常にチェックして傷んでいるようなら速やかに交換するようにしましょう。
ステムの交換時期
ステム
交換の目安:クラックや腐食を見つけたら
昔は簡単に折れるような危険な軽量ステムもありましたが、現在は危ないものは減ってきました。ただし、100gを切るような軽量ステムは心配なので、定期的にクラックをチェックしたほうがいいでしょう。ステムはハンドルとフォークを繋ぐ重要なパーツです。走行中に折れると運が良くて大怪我、運が悪ければ死亡事故に直結します。軽量ステムを使っている方は注意が必要です。
ハンドルの交換時期
ハンドル
交換の目安:腐食、傷、へこみを見つけたら
実はアルミのハンドルバーは消耗品なのです。バーテープやブラケット部に汗が染み込んで、ハンドルが腐食して穴が開いてしまうことがあります。バーテープを交換する時にハンドルの表面が腐食していないかをチェックしましょう。穴が開くと乗車中に折れてしまうこともあるので非常に危険です。カーボンハンドルの場合はステムのクランプ部分の傷や、レバーのバンド部分の傷に注意が必要です。大きく変形している場合は交換しなければなりません。へこんでいると固定力が低下する上、カーボン線維が切れていると強度も落ちてしまいます。素材に関わらず、落車したらハンドルの傷や曲がりをチェックすることが必要です。
バーテープに汗が染み込んた状態で長期間使っていると、アルミハンドルが汗で腐食して、ボロボロになって穴が開いてしまうこともあります。特にローラー台で使う人は注意が必要です。いつも手が触れているバーテープは、落車や摩耗で破れたら交換です。汗が染み込むところなので、汗臭くなったらケチらずに新品に交換しましょう。
ブラケットフードは摩耗によって表面の模様がなくなってきたら交換です。ただし、ゴムなので使っていなくても劣化します。べたつくようになったら交換時期です。高いものではないので早めに交換するようにしましょう。