Last Updated 2020.12.24
ロードバイクの消耗品交換に明確な基準はない
車には車検という制度があって、数年に一度交換時期を迎えた消耗品は強制的に交換させられますが、ロードバイクや自転車にはそもそも車検制度がないため、消耗品の交換はロードバイクを所持している本人の裁量に一任されています。
ロードバイクを大切に乗っている人は数千キロに一度は消耗品を交換するというまめな方から購入してから一度も交換したことがない人まで様々です。
ロードバイクは高価な上に高い速度域で走行する乗り物ですから、消耗品を消耗した状態で乗り続けるという事はとても危険です。
ロードバイクは走るために必要な最低限のパーツで構成されている乗り物です。それだけに、どこか消耗して機能が失われたら、性能が低下するだけでなく安全性も損なわれてしまいます。消耗品一つで事故に繋がる可能性もありますから意識を高く持って消耗品の交換時期を見極めるクセをつけましょう。
消耗は徐々に起こっていくことを理解する
消耗による劣化は徐々に起こっていくので、性能低下には中々気づきにくいです。だからいい状態を覚えておくことが必要です。いい状態とは購入したてのころの乗り味であったりシフトフィーリングであったりといった感覚です。このいい状態の基準を自分の中に持っておかないと異変に中々気づけないですし、対処もできません。
シフトワイヤーは切れやすい
シフトワイヤーの劣化が始まると、最初にでる症状は変速操作が重くなることです。アウターとワイヤーの間の潤滑が失われたり、ワイヤーが変形したりして、摩擦が増えてしまうケースです。ワイヤーそのものも劣化します。幾度となく変速を繰り返していると、金属疲労によってワイヤーの強度が低下して、最終的には切れてしまいます。
コンポーネントの多段化によって変速回数が増えたことに加えて、ワイヤリングが複雑になったことでシフトワイヤーは昔に比べて切れやすくなっています。
特に切れやすいのがリアのシフトワイヤーです。変速回数が多くしかも、レバー内を複雑に曲がりながら通っているために、レバーの中で何度も何度も曲げられ伸ばされ引っ張られを繰り返しているうちに、タイコの直前で切れてしまうのです。
レバーの中でワイヤーが切れると厄介です。切れたことに気づかずに変速操作をしてしまうと、レバーの中でワイヤーが絡まって修復不可能になることもあります。
しかし、シフトワイヤーの交換時期の目安を出すのは難しいです。走行距離や変速回数、走り方、ロー側をメインに使うのか、トップ側をメインに使うのか、雨の中でも走るのか、保管状況、フレームの設計、フレーム内蔵か外装か、ワイヤーの組み方の上手い下手等によって大きく変わるので、一概に何kmで交換とか何ヶ月で交換しましょうとは言えないのが現状です。
大まかな目安としては、5,000km前後で交換が一つの目安になります。変速回数の多い人は4,000km位でも交換しても良いと思います。
ワイヤー劣化の兆候を知るには
ユーザー側でワイヤーの劣化を知るにはどうしたらいいのでしょうか。
まずはワイヤーの劣化の兆候を感じ取るしかありません。ワイヤーは突然切れることはありません。必ず兆候があります。シフトワイヤーは何本もの金属の糸を束ねて一本の紐状にしたものですが、その金属の糸が一本また一本と切れていくことになります。ワイヤーが切れ始めると、ワイヤーの位置決め能力が徐々に低下して正確に変速できなくなってきます。
シフトワイヤーが切れ始めたら、いくら変速調整してもスパスパ変速が決まらなくなります。このような症状が出たら、すでに正しい変速ができなくなっているということです。本来はこうなる前に交換しなければなりません。
自分なりの交換スパンを把握する
最も重要なのは自分だけの交換スパンを把握することです。自分の走り方なら何kmに1回、もしくは何ヶ月に1回交換が必要になる、というように自分の交換スパンの基準を持っておくことが大切です。
変速操作感覚に常に耳を傾けておくこと、定期的にワイヤーの状態を確認すること、自分の交換スパンを知っておくこと。これがシフトワイヤーの交換時期を見極めるために必要なことです。
シフトワイヤーを確認する方法
シフトワイヤーを確認する方法は3つあります。
1つ目はシフトレバーのブラケットフードをめくって、レバー内側にある白いケーブルカバーを外せばワイヤーが見えます。そのまま変速すれば、ワイヤーの状態を確認できます。これではワイヤーのごく一部しか見ることができないため、次に説明するワイヤーを露出させる方法のほうが確実です。
2つ目はワイヤー外装フレームの場合、親指でリアディレーラーを押すと、チェーンステーにあるアウター受けからアウターワイヤーを外せます。こうするとワイヤーが弛むので、レバーからワイヤーを露出させることができます。
3つ目はレバーからワイヤーを取り出して確認します。シフトワイヤーが弛めば、レバー下部のケーブル穴からシフトワイヤーを露出させることができます。細い工具等でタイコを引っ掛けるとワイヤーを引っ張り出しやすくなります。ワイヤーの状態を確認して、金属の糸が一本でも切れていないか確認します。切れていたら即交換です。
フレーム内蔵式の確認方法
シフトワイヤーがフレーム内蔵式の場合の確認方法です。
リアのチェーンをローに入れたまま、右シフターをトップまでシフトするとシフトワイヤーを弛ませることができます。そうするとシフトレバーからシフトワイヤーを引っ張り出すことができます。
リアディレーラーに留めているワイヤーを外せば、レバーからシフトワイヤーを引き出して確認することはできますが、リアディレーラーのワイヤーの固定部分が傷むのでお勧めしません。
フロントのシフトワイヤーの交換時期は
フロントのシフトワイヤーもリアのシフトワイヤー同様に消耗はしますが、リアほど変速の機会が少ないことや、ワイヤーの巻取り量が少ないことからリアに比べて消耗は少ないです。もし気になるのでしたら、リアのシフトワイヤーを交換するタイミングに合わせてフロントのシフトワイヤーも交換しておくと安心です。
保管する時に気をつけること
ロードバイクを保管するときは、ワイヤーが最もテンションがかからない状態のフロントインナー、リアトップにしておくのがおすすめです。そうすることでシフターの中でワイヤーの曲がりが少なくなり、全体的にテンションが低くなるためにワイヤーが傷みにくいというメリットがあります。また、ディレーラーのバネもダメージを受けにくくなるため全体的に長持ちさせることができます。
ブレーキワイヤーは長持ちする
ブレーキワイヤーはシフトワイヤーに比べて切れにくくできています。普通の使用であれば2年間くらいは問題なく使えてしまいます。
とはいえ、命に関わる部分なので油断はできません。
ブレーキワイヤー劣化の兆候
ワイヤー内蔵ハンドルや曲率が大きいハンドルでは、当然アウターワイヤーもキツく曲げられてしまうため、そこで大きな抵抗になって、ライナーが傷ついて摩耗することがあります。ブレーキワイヤーが劣化するとレバーの戻りが悪くなり、操作感が悪くなります。
ブレーキワイヤーの交換頻度
シフトワイヤーよりは少なくても問題ありません。注油などの手入れをきちんとしていれば、1万km以上は平気で持ちます。目安はシフトワイヤーの交換2回~4回に1度、ブレーキワイヤーを交換することを目安にするといいと思います。
しかし、あまり走らない人や複数台所有する人はシフトワイヤーの交換を2回~4回も待っていると何年も経過してしまい、ブレーキワイヤーの経年劣化が起きていまいます。シフトワイヤーの交換が年に1回以下の人はシフトワイヤーと一緒にブレーキワイヤーも交換することをおすすめします。
ブレーキワイヤーで注意する部分
ブレーキキャリパーのワイヤーを固定している部分には注意しましょう。ホイール交換等で何度もブレーキワイヤーの固定をし直している場合、ブレーキワイヤーが固定部分で潰れてしまいそこから切れることもあります。ブレーキキャリパーのワイヤー固定部分には注意が必要です。
アウターケーブルも消耗品
忘れてはいけないのがアウターケーブルです。アウターケーブルは常に風雨にさらされる部分のため想像以上に摩耗や消耗が激しい部分でもあります。
アウター表面にヒビが入ったり、曲がっていたら交換です。落車や輪行でアウターを曲げてしまい、それが原因で引きが重くなることも多いです。ワイヤーの交換頻度が多い人は、そのたびにアウターまで交換していたらコスト的にも手間的にも大変なので、アウターは使いまわしでも良いでしょう。シフトワイヤーの交換2回~3回ごとにアウター交換1回で問題無いと思います。しかし、アウターは乗らなくても劣化するのでワイヤーの交換を1年に1回くらいしかしない人はワイヤーと一緒にアウターも交換するのがおすすめです。
内蔵フレームは注意が必要
ワイヤーを内蔵するフレームやハンドルでは、アウターがフレームやハンドルと擦れてひどく摩耗することが多いです。アウターの金属部分が露出するとそこから錆びて劣化が一気に進むので即交換するようにしましょう。
アウターカップも消耗する
アウターカップが樹脂の場合は、使っているうちにカップがすり減って、アウターが突き抜けてしまうこともあります。そうなるとワイヤーの位置決めが曖昧になってしまいます。カップも確認するようにしてください。