Last Updated 2021.01.04
短期間でもできることはたくさんあります
これから暖かくなって各地でクリテリウムであったりロングライドイベントであったり、ヒルクライムレースであったりとロードバイクのイベントが各地で開催されます。冬場寒かったから全然ロードバイクに乗っていなかったけど、そろそろ暖かくなってきたからイベントに参加するためにロードバイクに乗り始めるかという方も多いと思います。
今回はそんな方に、久々にロードバイクに乗り始めて、イベントに参加することになったけど短期間でコンディションを仕上げないといけないという状況になった時に、短期間でやるべきことを取り上げて各イベントに参加する時の役にたたせていただきたいと思います。
ヒルクライムで効果的な呼吸法
上りでは息が切れて浅い呼吸になりやすいものです。しかし浅く速い呼吸だと吸った空気の一部しか体内に取り込むことができず、パフォーマンスが落ちてしまいます。しっかりと息を吐き切り、大きく息を吸うことが大切です。そうすることで吸った空気を効率よく体内に取り入れられて、パフォーマンスの向上が見込めます。
浅い呼吸だと、肺に届く空気の量が少なくなってしまいます。横隔膜をうまく使う意識で深く大きい呼吸にすると、酸素を取り込む量が増えてヒルクライムのような有酸素運動に有利になります。
苦しい時に深い呼吸をしようとすると、腹部の筋力や柔軟性が必要になります。ロードバイクに乗っていない時にも深い呼吸を意識して、呼吸に必要な筋肉を養う意識が大切です。
普段の呼吸から深い呼吸を意識する
普段の練習から大きく吸って吐ききるということを意識しておくと良いでしょう。
ヒルクライムしながら深呼吸を続ける、ため息をつきながらヒルクライムするといった深く呼吸する意識が大切です。
酸素は走る力の源です。その酸素を取り入れる呼吸法を見直せば、ヒルクライム力の根本から改善される可能性があります。呼吸法は難しい技術も苦しいトレーニングも必要なく、毎日実践できるものなのでせひ試してみてください。
詳しい呼吸法については下記の記事も参考にしてみてください。
深い呼吸によるパフォーマンスアップ
人間は体内に酸素を取り入れるために空気を吸いますが、1回の呼吸につき、約150mlが口腔、鼻腔、気管、気管支に残り、肺まで届きません。どれだけ空気を吸っても、1回の呼吸につき150mlは無駄になってしまいます。これを死腔といいます。よって、呼吸の回数が増えれば増えるほど、吸入する空気量に対する無駄になる空気量の割合も多くなってしまいます。浅い呼吸を多く繰り返すよりも、回数は少なくても深い呼吸をした方が、酸素を効率よく取り入れることができます。つまり、摂取する酸素量を増やすには、呼吸の回数よりも呼吸の量が大切になってきます。
深い呼吸の例
吸気量が1回600mlの深い呼吸を1分間に15回繰り返した場合、吸い込む空気量は浅い呼吸と同じ600ml×15回=9000mlですが、無駄になる空気は150ml×15回=2250mlで、肺の中まで届く空気は9000ml – 2250ml=6750mlとなります。
浅い呼吸の例
吸気量が1回300mlの浅い呼吸を1分間に30回繰り返したとすると、吸う空気量は300ml×30回=9000mlですが、死腔によって呼吸1回につき150mlが気管を出入りするだけで無駄になります。150ml×30回=4500mlが無駄になっています。この場合、肺に届いている空気量は9000ml – 4500ml=4500mlとなり吸った空気の半分しか肺に届いていないことになります。
深い呼吸によるフォームが良くなるメリット
大きく深い呼吸はライディングフォームにもメリットがあります。浅い呼吸だと肩が上がって首まわりが固まってしまい、力みが生じて浮足立ったライディングフォームとなってしまいます。また、腕でハンドルを突っ張ってしまうのでハンドル荷重になってしまい、乗車バランスが崩れてしまいます。大きく深い呼吸にすることで、肩周りの力みが抜けて感覚的に重心が下がり、お腹まわりに力を入れやすくなります。また、焦って気持ちが浮ついて効率の悪い走りになるのを防ぎリラックスした走りもしやすくなります。
意外な盲点が脱水症状
練習ではそこそこ走れるのに本番では思ったようなタイムが出せない。多くの人が経験するイベントあるあるではないでしょうか。それを本番に弱いなどといいますが、実は脱水状態が原因である場合が多いというのです。
ヒルクライムレースでは、ほとんどの人が本来の実力を発揮できていないと思います。理由としては脱水状態です。実はこの脱水状態というのは走行中に水分補給をしなかったからという単純な話ではないのです。ヒルクライムイベントに参加することそれ自体が脱水状態を呼び込みやすいのです。
原因の一つは移動時に乗る車です。車内はエアコンで乾燥している上に、乗車中は喉が渇いてもドリンク類を購入できないですし、トイレの心配もあって水分を控える人は多いです。車での長距離移動は脱水状態になりやすいのです。
開催場所に到着しても脱水状態は止まりません。原因の2つ目は標高です。ヒルクライムイベントは標高の高い場所で開催されることが多いですが、高地にいると人は脱水状態になりやすいのです。到着後、受付を済ませてから各メーカーのブースを回ることもヒルクライムイベントの楽しみの一つですが、高地の屋外で歩き回っているとさらに脱水状態が加速してしまいます。
本番で実力を発揮するためには
前日のアップで運動を始めると発汗により脱水状態はさらに悪化します。夕食後に自転車仲間とビールを飲んだり(アルコールには利尿作用があるために、尿と一緒に大量の水分が排出されてしまう)、イベント開催地にはよくある温泉にゆっくり浸かったり、そうしているうちに、あなたの体内からはどんどんと水分が抜けていってしまっています。ヒルクライムイベントには脱水状態になる条件が揃っているのです。日常生活と同じ感覚でいると、簡単に脱水状態になってしまいます。
おそらく多くの人は、日常生活と同じくらいの水分量しか摂取していないと思います。それだと全然足りないのです。だから多くの参加者は知らず知らずのうちに脱水状態になってしまい、肝心の本番で実力を出しきれないのです。
さらにやっかいなのは、脱水症状には曖昧なものが多く、力が出ない、喉が渇く、頭が痛い、集中力がなくなる、ボーッとする、脚がつる等、自分でも気づきにくいということです。普段から運動していない人ほど脱水に対する危機意識は薄いです。救急車を呼ぶかどうかというレベルの脱水状態になっている人でも自覚症状がないこともあります。自分では気がつかないから、毎年同じ過ちを繰り返してしまうのです。
会場までの車移動
車の車内の空気はエアコンで極度に乾燥しており、体内から水分が出ていきやすいです。さらに窓からの輻射熱や運転の緊張等によって汗をかきやすい状態になっています。高速道路では、トイレを気にして水分を控える、喉が渇いてもドリンクを購入できない等、水分を摂取しにくい状況が続きます。車での長距離移動は脱水状態になりやすいのです。
標高の高さ
標高の高い場所は平地に比べて空気が乾燥しており、肌から水分が失われていきます。さらに、酸素が薄いので呼吸回数が増えて、平地に比べて呼気に水分が多く含まれて体外に出てしまいます。高地にいるだけで人間は水分を失っていくのです。
温泉での発汗
ヒルクライムイベントの開催地は温泉で有名な場所も多いです。入浴も脱水の原因になります。15分程度の入浴で800mlもの汗をかくといわれています。しかも、入浴しているので大量に発汗しているという自覚がありません。
ブース見学
ヒルクライムイベント会場にはメーカーブースが設置されていることも多いです。ゆっくりと見て回るのは楽しいですが、気をつけないとどんどんと水分が出ていってしまいます。標高も気温も高い場所ではなおさら注意が必要です。
脱水状態を防ぐ工夫
日常生活感覚のままヒルクライムイベントに臨むと、自然と脱水状態に陥りがちになってしまいます。では、ヒルクライムイベントに参加する時に脱水状態にならないためにはどういった工夫が必要なのでしょうか。
少しづつ水分を摂り続ける
脱水状態を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。レース直前に水をがぶ飲みしてもだめです。一気にたくさん飲んでも体に吸収されるわけではありません。イベント前日から少しづつ水分を多めに摂っておいて体内に水分を蓄えておかないといけません。前日から意識して水やスポーツドリンクを多めに摂取しておけば脱水状態を防ぐことができます。前日に2L~3L飲んでおくと良いと思います。
車で移動時もペットボトル持参
移動で車に乗る時もコンビニで2Lのペットボトルを2本買って、車内で少しづつ飲むようにしましょう。同じ味だと飽きるので、一本は水、一本は体に吸収されやすいスポーツドリンクがおすすめです。
利尿作用のある飲料は避ける
緑茶やコーヒー等は利尿作用があるため避けたほうがいいでしょう。また、冷たいものばかり飲んでいると胃腸が弱り水分を取り込みにくくなってしまうこともありますのでお腹が弱い人は温かいものを飲むといった工夫も必要です。
イベント当日もボトル2本を携帯
イベント当日も水分補給を意識することが大切です。イベント当日も朝から水分補給をしてください。朝起きて宿を出るまでに水を飲んでトイレに行きたいなという状態になればとりあえずは大丈夫です。そのあともスタートまでチビチビと飲んでおきましょう。レースを走っている最中も補水は必須です。ロードバイクが重くなるからといってボトルを持っていかないのはいけません。それは失敗します。走行時間が1時間半を超えそうなら、ボトルを2本は持って走るようにしましょう。暑い日なら1本はポカリスエットか電解質パウダーがおすすめです。もう1本は水にして体を冷やせるようにしておくといいでしょう。コース途中に給水ポイントがあるなら、ボトル1本で走り出し、給水所で補充するというやり方もアリだと思います。
ボトル無しはトップ選手だけです
上位に入るようなトップレベルの選手であれば、レース時間も短いのでボトルを持たずに走ってもいいかもしれませんが、それを一般の人がまねしてはいけません。走る時間が違います。速い人でも、レースが1時間を超えるようであれば、ボトル1本は持っていたほうがいいと思います。ボトルを持たずに走るというのは、体調管理を含めた調整がきちんとできていて、スタート前にも正しく補給ができているごく一部の速い人が、一か八かでやる戦法です。